○パワー・ハラスメントの防止等に関する要綱
令和2年5月29日
訓令第45号
(趣旨)
第1条 この要綱は,人事行政の公正の確保,職員の利益の保護及び職員の能力の発揮を目的として,パワー・ハラスメントの防止のための措置及びパワー・ハラスメントが行われた場合に適切に対応するための措置に関し,必要な事項を定めるものとする。
(定義)
第2条 この要綱において,「パワー・ハラスメント」とは,職務に関する優越的な関係を背景として行われる,業務上必要かつ相当な範囲を超える言動であって,職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え,職員の人格若しくは尊厳を害し,又は職員の勤務環境を害することとなるようなものをいう。
(町長の責務)
第3条 町長は,職員がその能力を十分に発揮できるような勤務環境を確保するため,パワー・ハラスメントの防止に関し,必要な措置を講ずるとともに,パワー・ハラスメントが行われた場合においては,必要な措置を迅速かつ適切に講じなければならない。
2 町長は,パワー・ハラスメントに関する苦情の申出,当該苦情等に係る調査への協力その他パワー・ハラスメントが行われた場合の職員の対応に起因して当該職員が職場において不利益を受けることがないようにしなければならない。
3 町長は,パワー・ハラスメントの防止等のため,職員に対し,研修を実施する等職員の意識の啓発及び知識の向上を図らなければならない。
(職員の責務)
第4条 職員は,パワー・ハラスメントをしてはならない。
2 職員は,別紙第1に定める指針を十分認識して行動するよう努めなければならない。
3 管理又は監督の地位にある職員は,パワー・ハラスメントの防止のため,良好な勤務環境を確保するよう努めるとともに,パワー・ハラスメントに関する苦情の申出及び相談(以下「苦情相談」という。)が職員からなされた場合には,苦情相談に係る問題を解決するため,迅速かつ適切に対処しなければならない。
(苦情相談への対応)
第5条 パワー・ハラスメントに関する苦情相談が職員からなされた場合に対応するため,苦情相談を受ける職員(以下「相談員」という。)を総務課に配置する。
2 相談員は,別紙第2に定める指針に十分留意して,苦情相談に係る問題を迅速かつ適切に解決するよう努めるものとする。
3 職員は,相談員に対して苦情相談を行うほか,東臼杵郡公平委員会に対しても苦情相談を行うことができる。この場合において,東臼杵郡公平委員会は,苦情相談を行った職員等から事情の聴取を行う等の必要な調査を行い,当該職員等に対して指導,助言及び必要なあっせん等を行うものとする。
附則
この要綱は,令和2年6月1日から施行する。
別紙第1(第4条関係)
パワー・ハラスメントを防止しパワー・ハラスメントに関する問題を解決するために職員が認識すべき事項についての指針
第1 パワー・ハラスメントを防止し円滑な業務運営を行うために職員が認識すべき事項
1 基本的な心構え
職員は、パワー・ハラスメントに関する次の事項について十分認識しなければならない。
一 パワー・ハラスメントは、職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、職員の人格若しくは尊厳を害し、又は職員の勤務環境を害するものであることを理解し、互いの人格を尊重し、パワー・ハラスメントを行ってはならないこと。
二 業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示、指導、調整等についてはパワー・ハラスメントに該当しないこと。一方、業務指示等の内容が適切であっても、その手段や態様等が適切でないものは、パワー・ハラスメントになり得ること。
三 部下の指導・育成は、上司の役割であること。また、指導に当たっては、相手の性格や能力を充分見極めた上で行うことが求められるとともに、言動の受け止め方は世代や個人によって異なる可能性があることに留意する必要があること。
四 自らの仕事への取組や日頃の振る舞いを顧みながら、他の職員と能動的にコミュニケーションをとることが求められること。
五 同一部署の職員間におけるパワー・ハラスメントにだけ留意するのでは不十分であること。
例えば、職員がその職務に従事する際に接することとなる他部署の職員との関係にも十分留意しなければならない。
六 職員以外の者に対してもパワー・ハラスメントに類する言動を行ってはならないこと。
2 パワー・ハラスメントになり得る言動
パワー・ハラスメントになり得る言動として、例えば、次のようなものがある。
一 暴力・傷害
ア 書類で頭を叩く。
イ 部下を殴ったり、蹴ったりする。
ウ 相手に物を投げつける。
二 暴言・名誉毀損・侮辱
ア 人格を否定するような罵詈雑言を浴びせる。
イ 他の職員の前で無能なやつだと言ったり、土下座をさせたりする。
ウ 相手を罵倒・侮辱するような内容の電子メール等を複数の職員宛てに送信する。
(注) 「性的指向又は性自認に関する偏見に基づく言動」は、セクシュアル・ハラスメントに該当するが、職務に関する優越的な関係を背景として行われるこうした言動は、パワー・ハラスメントにも該当する。
三 執拗な非難
ア 改善点を具体的に指示することなく、何日間にもわたって繰り返し文書の書き直しを命じる。
イ 長時間厳しく叱責し続ける。
四 威圧的な行為
ア 部下達の前で、書類を何度も激しく机に叩き付ける。
イ 自分の意に沿った発言をするまで怒鳴り続けたり、自分のミスを有無を言わさず部下に責任転嫁したりする。
五 実現不可能・無駄な業務の強要
ア これまで分担して行ってきた大量の業務を未経験の部下に全部押しつけ、期限内に全て処理するよう厳命する。
イ 緊急性がないにもかかわらず、毎週のように土曜日や日曜日に出勤することを命じる。
ウ 部下に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる。
六 仕事を与えない・隔離・仲間外し・無視
ア 気に入らない部下に仕事をさせない。
イ 気に入らない部下を無視し、会議にも参加させない。
ウ 課員全員に送付する業務連絡のメールを特定の職員にだけ送付しない。
エ 意に沿わない職員を他の職員から隔離する。
七 個の侵害
ア 個人に委ねられるべき私生活に関する事柄について、仕事上の不利益を示唆して干渉する。
イ 他人に知られたくない職員本人や家族の個人情報を言いふらす。
3 懲戒処分
パワー・ハラスメントは懲戒処分に付されることがある。職員以外の者に対し、パワー・ハラスメントに類する言動を行ったときも、信用失墜行為、国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行などに該当して、懲戒処分に付されることがある。
第2 職場の構成員として良好な勤務環境を確保するために認識すべき事項
勤務環境はその構成員である職員の協力の下に形成される部分が大きいことから、パワー・ハラスメントが行われることを防ぐため、職員は、次の事項について、積極的に意を用いるように努めなければならない。
1 パワー・ハラスメントについて問題提起する職員をいわゆるトラブルメーカーと見て問題を真摯に取り上げないこと、又はパワー・ハラスメントに関する問題を当事者間の個人的な問題として片付けることがあってはならないこと。
職場におけるミーティングを活用することなどにより解決することができる問題については、問題提起を契機として、良好な勤務環境の確保のために皆で取り組むことを日頃から心掛けることが必要である。
2 職場からパワー・ハラスメントに関する問題の行為者や被害者を出さないようにするために、周囲に対する気配りをし、必要な行動をとること。
具体的には、次の事項について十分留意して必要な行動をとる必要がある。
一 パワー・ハラスメントやパワー・ハラスメントに当たるおそれがある言動が見受けられる場合は、職場の同僚として注意を促すこと。
二 被害を受けていることを見聞きした場合には、声をかけて相談に乗ること。
3 パワー・ハラスメントを直接に受けていない者も気持ちよく勤務できる環境をつくるために、パワー・ハラスメントと思われる言動が行われている状況について上司等に相談するなどの方法をとることをためらわないこと。
第3 自分が受けている言動がパワー・ハラスメントではないかと考える場合において職員に望まれる事項
職員は、自分が受けている言動がパワー・ハラスメントではないかと考える場合には、その被害を深刻にしないために、次の事項について認識しておくことが望まれる。
1 一人で抱え込まずに、相談窓口や信頼できる人等に相談すること
問題を自分一人で抱え込まずに、職場の同僚や知人等身近な信頼できる人に相談することが大切である。各職場内において解決することが困難な場合には、内部又は外部の相談機関に相談する方法を考える。なお、相談するに当たっては、パワー・ハラスメントであると考えられる言動が行われた日時、内容等について記録しておくことが望ましい。
2 当事者間の認識の相違を解消するためのコミュニケーション
パワー・ハラスメントは、相手に自覚がないことも多く、よかれと思っての言動であることもある。相手に自分の受け止めを伝えたり、相手の真意を確認したりするなど、話し合い、認識の違いを埋めることで事態の深刻化を防ぎ、解決がもたらされることがあることに留意すべきである。
別紙第2(第5条関係)
パワー・ハラスメントに関する苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項についての指針
第1 基本的な心構え
職員からの苦情相談に対応するに当たっては、相談員は次の事項に留意する必要がある。
1 被害者を含む当事者にとって適切かつ効果的な対応は何かという視点を常に持つこと。
2 事態を悪化させないために、迅速な対応を心掛けること。
3 関係者のプライバシーや名誉その他の人権を尊重するとともに、知り得た秘密を厳守すること。
第2 苦情相談の事務の進め方
1 苦情相談を受ける際の相談員の体制等
一 苦情相談を受ける際には、原則として2人の相談員で対応すること。
二 苦情相談を受けるに当たっては、苦情相談を行う職員(以下「相談者」という。)の希望する性の相談員が同席するよう努めること。
三 相談員は、苦情相談に適切に対応するために、相互に連携し、協力すること。
四 実際に苦情相談を受けるに当たっては、その内容を相談員以外の者に見聞されないよう周りから遮断した場所で行うこと。
五 行為者とされる者又は第三者からの聴取を行う場合は、相談者の了解を確実に得た上で人事当局と連携して対応すること。
2 相談者から事実関係等を聴取するに当たり留意すべき事項
相談者から事実関係等を聴取するに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
一 相談者の求めるものを把握すること。
将来の言動の抑止等、今後も発生が見込まれる言動への対応を求めるものであるのか、又は喪失した利益の回復、謝罪要求等過去にあった言動に対する対応を求めるものであるのかについて把握する。
二 どの程度の緊急性があるのかについて把握すること。
相談者の心身の状態等に鑑み、苦情相談への対応に当たりどの程度の緊急性があるのかを把握する。
三 相談者の主張等に真摯に耳を傾け丁寧に話を聴くこと。
特に相談者が被害者の場合、パワー・ハラスメントを受けた心理的な影響から必ずしも理路整然と話すとは限らない。むしろ脱線することも十分想定されるが、事実関係を把握することは極めて重要であるので、忍耐強く聴くよう努める。また、相談員自身の評価を差し挟むことはせず、相談者の心情に配慮し、その主張等を丁寧に聴き、相談者が認識する事実関係を把握することが必要である。
四 事実関係については、次の事項を把握すること。
(1) 当事者(パワー・ハラスメントの被害者及び行為者とされる者)間の関係
(2) 問題とされる言動が、いつ、どこで、どのように行われたか。
(3) 相談者は、行為者とされる者に対してどのような対応をとったか。
(4) 管理又は監督の地位にある職員等に対する相談を行っているか。
なお、これらの事実を確認する場合、相談者が主張する内容については、当事者のみが知り得るものか、又は他に目撃者はいるのかを把握する。
五 聴取した事実関係等を相談者に確認すること。
聞き間違えの修正並びに聞き漏らした事項及び言い忘れた事項の補充ができるので、聴取事項を書面で示したり、復唱したりするなどして相談者に確認する。
六 聴取した事実関係等については、必ず記録して保存しておくとともに、当該記録を厳重に管理すること。
3 行為者とされる者からの事実関係等の聴取
一 原則として、行為者とされる者から事実関係等を聴取する必要がある。
ただし、パワー・ハラスメントが比較的軽微なもの又は行為者とされる者に改善の余地があるもののパワー・ハラスメントとまではいえないようなものであり、対応に緊急性がない場合などは、管理又は監督の地位にある職員の観察又は指導による対応が適当な場合も考えられるので、その都度適切な方法を選択して対応する。
二 行為者とされる者から事実関係等を聴取する場合には、行為者とされる者に対して十分な弁明の機会を与える。
三 行為者とされる者から事実関係等を聴取するに当たっては、その主張に真摯に耳を傾け丁寧に話を聴く、聴取した事実関係等を行為者とされる者に確認するなど、相談者から事実関係等を聴取する際の留意事項を参考にし、適切に対応する。
4 第三者からの事実関係等の聴取
パワー・ハラスメントについて当事者間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合などは、第三者から事実関係等を聴取することも必要である。
この場合、相談者から事実関係等を聴取する際の留意事項を参考にし、適切に対応する。
5 相談者に対する説明
苦情相談に関し、具体的にとられた対応については、相談者に説明する。
第3 問題処理のための対応の在り方
1 基本的事項
相談員が、苦情相談に対応するに当たっては、第2の第2項を踏まえ、相談者からの話を丁寧に聴きながら適切に対処していく必要がある。また、対応に当たって、相談員が相談者に対しパワー・ハラスメントに該当するかどうかに関する心証を伝えてはならない。
2 事案に応じた対処
対応に当たっては、パワー・ハラスメントに該当する蓋然性の程度に応じて次のような対処が考えられる。
一 相談者の話が事実であれば明らかにパワー・ハラスメントに該当すると思料される事案
相談者の了解を得て、速やかに事案を人事当局に知らせる必要がある。
人事当局又は相談者の意向によっては、相談員も事実関係等の聴取の実施等に引き続き協力する。なお、相談者が人事当局に知らせることを望んでいない場合でも、相談者が自傷行為に及ぶ可能性がある場合、深刻な状況にあるとうかがわれる場合など、緊急性が高いと考えられる場合には、相談者自身は人事当局に知らせることを望んでいない旨も含めて、人事当局に連絡する必要がある。
二 相談者の話の内容が事実であるとしてもパワー・ハラスメントに該当するかどうか判断が難しい事案
(注) 以下の対処は、相談者がこれらの対処を行うことを希望していることが前提であり、相談者の意向を確認せずに相談員限りの判断で行ってはならない。
(1) 当事者双方の主張を公平かつ丁寧に聴き、隔たりを埋める。
(例)
人事当局と連携して、行為者とされる者からの事実関係等の聴取及びそれを踏まえた相談者からの事実関係等の聴取を実施する(必要があればそれぞれ複数回実施する。)。その際、過去の事実関係を確認していずれの言い分が正しいのかを判定することを目指すのではなく、双方の主張を聴いて、認識の隔たりを埋めつつ、将来に向けて双方がとるべき対応について共通認識に到達することを目指す。
(2) 第三者からの事実関係等の聴取を実施し、その結果を踏まえ、人事当局としての判断を示す。
(例)
(1)の対応を行っても当事者双方が共通認識に到達することが困難な場合には、第三者からの事実関係等の聴取を実施して、事実関係を明らかにした上で、人事当局としての判断を示し、必要な措置を行う。
この段階においては、事案への対応は相談員から人事当局に完全に移行していることが多いと考えられるが、人事当局又は相談者の意向によっては、相談員も事実関係等の聴取の実施等に引き続き協力する。
三 相談者の話が事実であるとしても明らかにパワー・ハラスメントには該当しないと思料される事案
相談者の話の内容からすれば、明らかにパワー・ハラスメントには該当しないと思料される場合であっても、相談者が組織的対応を求めているときには、相談者の了解を得て、事案を人事当局に知らせる必要がある。一方、相談者が、相談員限りでの対処や相談員からのアドバイスを望んでいる場合には、業務遂行やコミュニケーションの在り方の見直しなどによる解決を助言することも考えられる。